ルーマニア代表(ステジャリー)2026 完全ガイド — フランスを倒した国は、どこへ行ったのか
1980年、ブカレスト。
ルーマニアがフランスを15-0で下しました。
完封です。
1983年にはウェールズを24-6、1984年にはスコットランドを28-22。
この国はかつて、シックスネーションズの強豪と対等に殴り合っていました。
そのルーマニアは、2026年7月時点で世界21位。
2019年ワールドカップには出場できませんでした——予選で資格違反を犯し、失格になったからです。
東欧の雄と呼ばれた国に何が起きたのか。
そして今、どんなチームになっているのか。
基本データ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 愛称 | ステジャリー(Stejarii=樫の木たち/The Oaks) |
| 世界ランキング | 21位・62.45ポイント(2026年7月20日時点) |
| RWC2027 | 出場権獲得済み(欧州枠)。通算10回目の出場 |
| プール | プールB(南アフリカ・イタリア・ジョージアと同組) |
| ヘッドコーチ | ダビド・ジェラール(フランス人、2024年から) |
| 最高ランキング | 13位(2003-2006年) |
| 国内リーグ | リーガ・ナツィオナラ・デ・ルグビ |
かつての強さ — 数字で見る「東欧の雄」
ルーマニアの黄金期は1960年代から1980年代前半でした。
1940年代後半から1950年代にかけて、フランス仕込みの指導者たちが育成システムを築いたことが土台にあります。
その時代に挙げた勝利を並べると、いかに強かったかが分かります。
対フランス
- 1960年 11-5
- 1974年 15-10
- 1980年 15-0
- 1982年 13-9
- 1990年 12-6(アウェー)
対ウェールズ
- 1983年 24-6
- 1988年 15-9(アウェー)
対スコットランド
- 1984年 28-22
- 1991年 18-12
フランスには1960〜1990年に通算8勝(上記はその一部)、ウェールズに2勝、スコットランドに2勝。
ワールドカップ9回出場、しかし——
ルーマニアは1987年の第1回大会から2023年まで9回ワールドカップに出場しています(1987, 1991, 1995, 1999, 2003, 2007, 2011, 2015, 2023)。
このうち1987, 1991, 1999, 2003, 2007, 2015の6大会で勝利を挙げていますが、プールステージを突破したことは一度もありません。
そして——出場していない大会が1つだけあります。2019年日本大会です。
2019年、なぜ出場できなかったのか
ルーマニアはワールドカップ2019の予選で、資格を満たさない選手を起用しました。
対象となったのはシオネ・ファカオシレア。
この選手は以前トンガ・セブンズ代表でプレーしており、その時点でルーマニア代表としての資格を失っていました。
制裁は勝点30の剥奪。
これによりルーマニアは出場権を失い、ロシアが繰り上げで出場しました。
この一件は、ルーマニア単独の問題ではありませんでした。
同じ2017-2018年のラグビーヨーロッパ選手権をめぐって、スペインが40点減点、ベルギーが30点減点の処分を受けています。
欧州予選そのものが大きく揺れた事案でした。
そして興味深いのは、その後の展開です。
次のワールドカップ(2023年)の予選では、今度はルーマニア協会が、スペインの選手資格をWorld Rugbyに提訴する側に回りました。
この提訴によりスペインは出場権を剥奪され、繰り上げでルーマニアが自動出場権を獲得しています。
処分を受けた側が、次は提訴する側になる。
欧州予選の内側では、そういうことが起きていました。
現在のチーム — 誰がルーマニア代表を着ているのか
ここが、いまのルーマニアを理解するうえで最も重要な部分です。
2026年7月のネーションズカップに招集された32名を見ると、明確な傾向があります。
南アフリカ系
- ジャン=ピエール・スミス(PR)
- エティエンヌ・テルブランシュ(BR)
- ニコラース・イメルマン(LO)
- ディラン・シュワルツ(CTB)
太平洋諸島系
- テヴィタ・マヌムア(WTB)
- ジェイソン・トマネ(CTB)
- ヒンクリー・ヴァオヴァサ(SO)
- イリエサ・ティケ(WTB)
32名中8名が、南アフリカまたは太平洋諸島にルーツを持つ名前です。
センターのトマネ、シュワルツも海外系です。
かつてフランスを完封した国が、いま代表チームをどう組み立てているか。
2019年の失格が「トンガ・セブンズ経験者の起用」によるものだったことを思い出すと、この構成の意味はより重く見えてきます。
注目選手 — 所属クラブとキャップ数
数字は2026年7月22日時点。
| 選手 | カタカナ | Pos | 所属クラブ | 年齢 | キャップ |
|---|---|---|---|---|---|
| Alexandru Savin | アレクサンドル・サヴィン | PR | ラピド(ルーマニア) | 31 | 58 |
| Adrian Moțoc | アドリアン・モツォク | LO | ニス(仏) | 30 | 36 |
| Gabriel Rupanu | ガブリエル・ルパヌ | SH | SCMティミショアラ(ルーマニア) | 28 | 45 |
| Marius Antonescu | マリウス・アントネスク | LO | セルヴェットRC | 33 | 45 |
| Taylor Gontineac | テイラー・ゴンティネアク | CTB | カストル(仏) | 26 | 19 |
ポルトガル・スペインとの決定的な違い
ポルトガルもスペインも、主力のほぼ全員がフランスのクラブに所属していました。
ところがルーマニアは違います。
最多キャップのサヴィン(58キャップ)は国内のラピド所属。ルパヌ(45キャップ)も国内のティミショアラ。
国内リーグが代表を支える構造が、まだ生きているのです。
- モツォク(197cm) — ラシン92(2017-18)→アジャン(2018-20)→マシー(2020-21)→オーリヤック(2021-22)→ビアリッツ(2022-25)→ニス(2025-)。
RWC2023にも出場した長身ロック - アントネスク(198cm) — ブレス(2019-23)→ナルボンヌ(2023-26)→セルヴェットRC(2026-)
- ゴンティネアク — フランスとルーマニアの二重国籍で、競技上はルーマニアを選択。
ルーアン(2021-24)→ベジエ(2024-26)→カストル(2026-) - ルパヌ(176cm/73kg) — 代表45キャップのSH
国内リーグ — 軍と警察のクラブが強い
ルーマニアの国内最高峰はリーガ・ナツィオナラ・デ・ルグビです。
CSAステアウア・ブカレストはリーグ優勝24回・カップ15回を誇る国内最多優勝クラブ。
年間運営予算は約192万5,000ユーロと報じられています。
「ステアウア」は軍のスポーツクラブです。
CSディナモ・ブカレストは優勝16回・カップ14回、さらにチャンピオンズリーグのタイトルも持ちます。
こちらは内務省系のクラブです。
代表選手はこのほか、SCM USVティミショアラ、CSラピド、CSMシュティインツァ・バイア・マーレなどから招集されています。
軍と警察のクラブが競技を支える構造は、社会主義時代のスポーツ制度の名残です。
フランスやイングランドのような商業クラブとは成り立ちが違います。
現在地 — 2026年の戦績
ラグビーヨーロッパ選手権2026では、3位決定戦でスペインに23-29で敗れて4位。
ワールドラグビー・ネーションズカップ2026の7月4日、サンティアゴでチリに31-48で敗れています。
チームは現在、ダヴィド・ジェラールHCのもとで再建を進めています。
RWC2027ではプールBで南アフリカ、イタリア、ジョージアと同組。
極めて厳しい組み合わせですが、24チーム制ではプール3位でも上位4チームに入ればラウンド16に進出できます。
注目すべき若手
RWC2027公式が「注目選手」として挙げているのは以下の3人です。
- マリウス・シミオネスク(FB)— WTB・CTB・FBをこなす多才なアタッカー
- ミハイ・グラウレ(CTB)— フィジカルと繊細なステップを併せ持つ若いセンター
- シュテファン・ブルイアナ(HO)— 戦術眼を持つ若きフッカー兼リーダー
いずれもルーマニア名の選手です。
海外系に頼る現状の一方で、こうした若手が育ちつつあります。
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