GUIDE

スペイン代表(ロス・レオネス)2026 完全ガイド — サッカー世界王者の国で、ラグビーはどう生きているか

#スペイン #ロス・レオネス #RWC2027 #ワールドカップ2027 #ラグビーヨーロッパ選手権 #ティア2 #ラグビー

2026年7月19日、ニュージャージーのメットライフ・スタジアム。7万人を超える観客の前で、スペインが延長105分のフェラン・トーレスのゴールを守り切り、アルゼンチンを1-0で下しました。2010年以来2度目のサッカーワールドカップ優勝です。

その4日後、この記事を書いています。テーマは、同じ国のラグビー代表です。

サッカーで世界の頂点に立った国。そのラグビー代表は世界17位で、28年ぶりのワールドカップ出場を決めたばかり。そして直近2大会は、いずれも選手資格違反によって出場権を剥奪されています。

同じ国のスポーツなのに、なぜここまで違うのか。数字で追っていきます。


基本データ

項目内容
愛称ロス・レオネス(Los Leones=獅子たち)
世界ランキング17位・66.83ポイント(2026年7月20日時点)
RWC2027出場権獲得済み(2025年2月9日確定・欧州枠)
W杯出場1999年以来28年ぶり2回目
プールプールC(アルゼンチン・フィジー・カナダと同組)
ヘッドコーチパブロ・ボウサ(アルゼンチン人)
主将ジョン・サバラ(PR)

まず「国柄」の話から — サッカーとラグビーの距離

スペインは紛れもないスポーツ大国です。サッカー、バスケットボール、テニス、自転車競技、モータースポーツ。世界水準の選手を継続的に輩出してきました。

その中でラグビーがどこにいるかというと、スペインスポーツ評議会(CSD)の分類で団体競技の5番目。サッカー、バスケットボール、ハンドボール、バレーボールに次ぐ位置です。

登録者数で見ると差は歴然としています。スペインラグビー協会(FER)が「記録的」と発表した2014-15シーズンの登録数が28,104人。一方、サッカーはCSDの統計で874,093人約31倍の開きです。

つまりスペインにおけるラグビーは、「スポーツ大国の中のマイナー競技」という立ち位置にあります。この前提を押さえると、以降の話がすべて繋がります。


2大会連続で、出場権を剥奪された

スペインラグビーを語るうえで避けて通れないのが、この事実です。

2019年大会予選 — 合計40点の減点

2017年と2018年のラグビーヨーロッパ選手権で、スペインは資格を満たさない選手を9試合で起用しました(うち8試合がRWC2019予選に該当)。

World Rugbyの独立司法・紛争委員会が下した制裁は、該当1試合につき勝点5減点、合計40点減点。これによりスペインは順位を失い、ロシアが欧州1位の枠で繰り上げ出場しました。

なおこのとき、ルーマニアも30点、ベルギーも30点の減点処分を受けています。欧州予選全体を揺るがす事案でした。

2023年大会予選 — パスポートの日付改ざん

そして次の大会でも、同じことが起きます。

争点になったのは、南アフリカ出身のプロップガビン・ファン・デン・ベルフの代表資格。3年間の居住要件を満たしているかどうかでした。

問題は、スペインへの入国日を改ざんしたパスポートのコピーが協会に提出されていたことです。この件を World Rugby に提訴したのは、前回の予選で共に減点処分を受けたルーマニア協会でした。2019年に南アフリカで行われた結婚式の写真が証拠として使われたと報じられています。

2022年4月末、World Rugbyの司法パネルが資格不備を認定。出場2試合それぞれに勝点5の減点、加えて罰金25,000ポンド

スペインは同年3月にポルトガルを33-28で下して2位となり、いったんは出場権を手にしていました。それが剥奪されます。2022年6月末に上訴も棄却されました。

繰り上げでルーマニアが自動出場権を得て、ポルトガルがプレーオフに回り——そのポルトガルが最終予選を勝ち抜いてRWC2023に出場し、フィジーを破る歴史的勝利を挙げることになります。

FERは、アルコベンダス(クラブ)の関係者3名が書面でパスポートの日付改変を認めたと表明しています。


2027年、28年ぶりの本大会へ

三度目の正直となったのが2025年でした。

ラグビーヨーロッパ選手権2025で準決勝に進出し、2025年2月9日にジョージアとともに欧州で最も早くRWC2027出場権を確定させます。同大会は決勝でジョージアに28-46で敗れて準優勝でした。

直近2シーズンの主な試合

ラグビーヨーロッパ選手権2025(準優勝)

日付対戦結果
2/2スペイン vs オランダ53-24
2/9スイス vs スペイン13-43
2/16スペイン vs ジョージア32-62
3/1 準決勝ポルトガル vs スペイン31-42
3/16 決勝ジョージア vs スペイン46-28

ラグビーヨーロッパ選手権2026(3位)

日付対戦結果
2/7スペイン vs オランダ51-33
2/14スペイン vs スイス53-14
2/21ジョージア vs スペイン42-30
3/8 準決勝ポルトガル vs スペイン26-7
3/15 3位決定戦スペイン vs ルーマニア29-23

2026年は準決勝でポルトガルに7点しか取れず敗退。そのポルトガルが決勝でジョージアを破って優勝しました。

ワールドラグビー・ネーションズカップ2026(7月・北米遠征)

日付対戦結果会場
7/4スペイン vs カナダ42-42エドモントン
7/11スペイン vs トンガ32-19エドモントン
7/18スペイン vs アメリカ22-29ケアリー

11月には**チリ(11/7)、ウルグアイ(11/14)、サモア(11/21)**との対戦が予定されています。


注目選手 — 主力7人全員がフランス所属

スペイン代表の構造を最も雄弁に語るのが、この表です。数字は2026年7月22日時点

選手カタカナPos所属クラブ年齢キャップ
Álvar Gimenoアルバル・ヒメノCEベジエ(仏プロD2)2863
Ignacio Piñeiroイグナシオ・ピニェイロLOグルノーブル(仏プロD2)2333
Jon Zabalaジョン・サバラ(主将)PRポー(仏トップ14)2932
Álvaro Garcíaアルバロ・ガルシアHOスタッド・フランセ(仏トップ14)2223
Kerman Aurrekoetxeaケルマン・アウレコエチェアSHビアリッツ(仏プロD2)2613
Manex Aricetaマネクス・アリセタBRバイヨンヌ(仏トップ14)227
Samuel Ezealaサミュエル・エゼアラWGスタッド・フランセ(仏トップ14)263

主将ジョン・サバラは、所属するポー(Section Paloise)でのプレーをInstagramで発信しています。

7人全員がフランスのクラブ。しかもサバラ、アウレコエチェア、アリセタ、エゼアラの4人は**フランスの育成システム出身(JIFF資格保持者)**です。

  • ヒメノ(63キャップ) — バリャドリッド(2017-19)からベジエへ。代表最多クラスの経験値を持つインサイドCTB
  • サバラ(主将) — 190cm/124kgのタイトヘッド。バイヨンヌの下部組織育ちで、タルブ→バイヨンヌ→ベジエ→ポー。代表初キャップは2020年2月1日のロシア戦
  • アウレコエチェア — 179cm/69kgという小柄なSH。エル・サルバドル(2018-19)からビアリッツへ移り、以後ビアリッツ一筋
  • エゼアラクレルモンの下部組織で育ち、2017年から2023年までクレルモンに在籍。その後ポーを経てスタッド・フランセ。フランスで完全に育った選手がスペイン代表を選んでいます

スカッド全体を見ると

2025/26シーズンの登録選手を年齢で見ると、最年長がベルナルド・バスケス(PR)38歳、次いでバウティスタ・グエメス(FH)37歳、JW・ベル(FB)36歳。一方でニコラス・インフェル(SH)とオリオル・マルシニャック(CE)は19歳

30代が10名前後いる一方で20歳前後の若手も複数——世代交代の途中にあるチームです。


「国内で食えない」構造

スペイン国内最高峰リーグはディビシオン・デ・オノール。2025-26シーズンで第59回を数え、11チームが参加します。1回総当たりの11節を戦った後、上位6チームのグループAと下位5チームのグループBに分かれる方式です。

主要クラブは、バリャドリッドのVRACケソス・エントレピナーレスINEXOエル・サルバドルレコレタス・ブルゴス2031UEサントボイアナシリシウス・アルコベンダスCRCポスエロカハソル・レアル・シエンシアス・セビージャなど。

ただしこのリーグは、報酬を得る選手と得ない選手が混在するセミプロリーグです。ラグビーだけで生活が成り立つ保証はない。だから力のある選手はフランスに向かう。代表の主力7人が全員フランス所属なのは、その帰結です。

サッカーではラ・リーガという世界最高峰のリーグを国内に持ち、選手が国外に出る必要がない国が、ラグビーではまったく逆の構造になっている。同じスペインで、競技によってここまで景色が違います。


協会の対策 — 「代表の鏡」を作る

FERはこの構造に手を打とうとしています。

カスティーリャ・イ・レオン・イベリアンズという協会直営のフランチャイズを設立し、これを「代表の鏡」と位置づけました。仕組みはこうです。

  • FERが選手と直接契約する
  • その選手を所属クラブへレンタルする
  • 育成と負荷管理を協会が一元的に握る

対象は代表候補40名規模。2026/27シーズンはイベリアンズが2期に分けて活動し、トビリシカップトヨタ・チャレンジに参戦することがFER総会で承認されています。

このほか、パフォーマンス・ユニットの設置、競技運営部門の強化、M20/M18のラグビーセンター再編、U20シックスネーションズへの参戦模索などがロードマップに含まれています。

サッカーの成功体験を持つ国が、ラグビーで「協会が選手を直接抱える」という選択に踏み切った。この試みが2027年にどう出るかは、見どころのひとつです。


日本代表との対戦

男子の対戦は通算3試合でスペインの0勝3敗(得点43・失点114)と記録されています。ただし個別の試合として確認できたのは2005年11月の日本 44-29 スペイン(エリサルド新ヘッドコーチの初戦)の1試合のみで、残る2試合の日付・スコアは確認できていません。

近年では別カテゴリでの対戦があります。

  • 2025年 女子ワールドカップ プールC:日本 29-21 スペイン(ヨーク)
  • 2026年 U20世界選手権 13位決定戦:日本U20 34-26 スペイン

関連記事

選手の所属チームやプロフィールは選手名鑑から検索できます。